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令和6年度の税制改正大綱についての解説と所感【第2弾】

さて、今回は令和6年度税制改正大綱についての解説と所感の第2弾です。
今回は【個人向け】です。

大綱の主な改正論点は以下の通りです。

  • 【法人】1.賃上げ税制の拡充
  • 【法人】2.飲食交際費の判定金額引き上げ
  • 【法人】3.倒産防止共済の損金算入の制限
  • 【法人】4.外形標準課税逃れへの対応
  • 【消費税】5.輸出物品販売場制度の見直し
  • 【消費税】6.インボイス3万円未満の自販機特例の要件緩和
  • 【個人】7.定額減税
  • 【個人】8.新NISA新設 ※令和5年度改正
  • 【個人】9.子育て支援(住宅ローン控除(令和6年中に居住する分)、生命保険料控除)
  • 【個人】10.扶養控除の見直し
  • 【資産税】11.相続時精算課税制度、生前贈与加算期間の見直し ※令和5年度改正

【個人】7.定額減税

今回の税制改正大綱の目玉と言われる改正内容ですが、減税手法については物議を醸しています。
岸田首相肝いりの減税政策で、給付やバラマキではなくあくまでも「減税」をアピールしたいようですが、
そのおかげで減税手法は非常に複雑なものになってしまいました。。

税理士事務所や会計事務所をはじめ、給与計算をされている方々にとっては業務負荷が大変に大きく、
民間への押し付けと捉えられても仕方ないと思います。

さて、具体的な内容は以下の通りです。
【対象者】
 所得税:令和6年分の合計所得金額が1,805万円以下の方
 住民税:令和5年分の合計所得金額が1,805万円以下の方
 ※合計所得金額とは、簡単に言うと各種所得金額の合計額です。
  給与所得、事業所得、雑所得、不動産所得、譲渡所得などの合計額で、
  特例を用いた特別控除や繰越控除の適用前の金額になります。
  例えば、給与収入だけの方は、給与収入で2,000万円以下です(所得金額調整控除がある方は、2,015万円以下)

【減税額】
 所得税:本人3万円、同一生計配偶者及び扶養親族1人あたり3万円
 住民税:本人1万円、控除対象配偶者及び扶養親族一人当たり1万円

【減税手法】
 ・給与所得者
  所得税:令和6年6月以後最初に支払われる給与等の源泉徴収税額から控除
  住民税:令和6年7月から令和7年5月までの11ヶ月にわたり徴収される住民税額から控除

 ・事業所得者
  所得税:令和6年の第1期予定納税額から控除
  住民税:令和6年の第1期納税額から控除

 ・公的年金受給者
  所得税:令和6年6月以後最初に支払われる年金の源泉徴収税額から控除
  住民税:令和6年10月以後最初に支払われる年金から徴収される住民税額から控除

以上がざっくりとした改正内容ですが、
令和6年1月30日に「給与等の源泉徴収事務に係る令和6年分所得税の定額減税のしかた」が国税庁より公表されました。
税理士事務所や給与計算事務に関わる方は要チェックです。

主な留意点は以下の通りです。
・令和6年6月1日時点で、扶養控除等申告書を提出して、甲欄源泉が適用されている方が対象。
 ※従業員が勘違いをして複数箇所に提出してしまうと後から問題が起こる。
・減税対象者となる同一生計配偶者や扶養親族は、源泉徴収税額の計算のための「扶養親族等」とは異なる場合がある。
 ※減税対象者には、非居住者は含めない。16歳未満の扶養親族は含むなど。
・新たに『源泉徴収に係る定額減税のための申告書』を提出してもらう必要がある。
・期中に対象者に異動があった場合でも、月次減税額は再計算しない。
 ※年末調整又は確定申告で精算の計算をする)
・年末調整時には「年末調整に係る定額減税のための申告書」を提出してもらう必要がある。
・源泉徴収票に減税額を記載する必要がある。

想像しただけでも大変そうですね。。
基本的には対象者等については、従業員からの申請に基づくことになり、
給与計算担当者では誤りに気付くことができない可能性もあります。
又、書類提出の失念等によっては適切に減税を受けることができない方も出てきそうです。
従業員の方もしっかりと制度を理解して申告する必要があります。

我々としては粛々とやるしかありませんね。

あと給与収入も事業収入もあるという方はどうなるのかはまだ決まっていないようですので、
またその辺りも追々決まってくると思われます。

国税庁 給与等の源泉徴収事務に係る令和6年分所得税の定額減税のしかたhttps://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0023012-317.pdf

【個人】8.新NISA新設 ※令和5年度改正

こちらは令和5年度の税制改正大綱になりますが、令和6年からスタートしたので簡単に解説したいと思います。
既に皆さんご存じと思いますが、令和5年までは「一般NISA」と「つみたてNISA」の2本軸があり、
それぞれ上限額が設定されていて非課税期間も5年と20年と制限がありました。

今回令和6年からは『新NISA』として一本化された上で、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」として生まれ変わりました。
「つみたて投資枠」・・・年間120万円上限、最大600万円、非課税期間無制限
「成長投資枠」・・・年間240万円上限、最大1,200万円、非課税期間無制限


何より投資枠は売却して空いた枠は再度非課税として投資ができるところが大きなメリットです。
これは開設しない手はないですね。

老後資金の2,000万円問題によって国民は年金に頼らずに自身で老後資金を用意していかなければならない点について、
政府に対しての不満は拭えません。
ただし、このような国民にとってプラスになる税制はドンドン出していって欲しいですし、
国民もそれをうまく活用していかなければいけないと思います。

【個人】9.子育て支援(住宅ローン控除(令和6年中に居住する分)、生命保険料控除)

今回の税制改正の一つの主軸として『子育て支援』があり、主に2つの改正があります。
・子育て世帯に対する住宅ローン控除の拡充
・子育て世帯に対する生命保険料控除の拡充


『住宅ローン控除』については、「子育て特例対象個人」へは新築住宅の控除限度額の拡充がされています。
ここで「子育て特例対象個人」とは、夫婦のいずれかが40歳未満の者又は19歳未満の扶養親族を有する者のことを言います。


なお、令和6年中の入居についてだけの拡充になります。
子育て世帯への支援とのことですが、私個人が考える子育て世帯への支援は
「これから子どもを作りたいと思っている夫婦」にも寄与するものであったほうがよいと考えます。
又、「子どもを作りたいと思う世の中」にしていくこともいまの日本にとって重要な課題です。

国民生活が苦しいことが原因で子どもを作らない、作れない世帯に対しての支援も配慮するのであれば、
今年入居に限定していることはとても不思議です。

そもそも住宅ローン控除はインパクトが大きいのに、入居する年によって控除額が大きく変わってしまうことは
国民にとって非常に不合理です。
租税特別措置法という法律で規定されているので仕方ないと言えば仕方ないのですが。。

さて、次に『生命保険料控除の拡充』です。
こちらは令和7年税制改正において詳細が決まる見込みですが、
23歳未満の扶養親族がいる場合、新生命保険料に係る一般生命保険料控除の限度額が4万円から6万円へ拡充されます。
ただし、一般、介護、個人年金の合計限度額は12万円から変更ありませんし、税額への影響は小さいものと言えます。

【個人】10.扶養控除の見直し            

こちらも令和7年税制改正において詳細が決まる見込です。
令和6年10月から児童手当については、所得制限の撤廃、支給期間の高校生年代までの延長が予定されていますので、
15歳以下とのバランスを考慮し、扶養控除の縮小が見込まれています。
又、ひとり親の自立支援を進める観点から、ひとり親控除の要件緩和、控除額拡充が予定されています。

・扶養控除(16~18歳以下)の縮小
 所得税:38万円⇒25万円
 住民税:33万円⇒12万円

・ひとり親控除の拡充
 所得要件(合計所得金額):500万円以下⇒1,000万円以下
 所得税:35万円⇒38万円
 住民税:30万円⇒33万円


【相続贈与】11.相続時精算課税制度、生前贈与加算期間の見直し ※令和5年度改正

さて、最後は資産税関係です。
こちらも令和5年度の税制改正ですが、令和6年より施行されています。
今回は内容の説明はしませんが、追々ひとつのテーマとしてブログを書ければと思っています。

相続税と贈与税は非常に密接な関係にあり、贈与税は相続税を補完する税として「相続税法」の中に規定されています。
「贈与税法」という法律はありません。
人はいつか亡くなります。人が亡くなったとき(俗に「相続が発生したとき」と言います)、
その人が持っていた財産を受け取った人には相続税がかかってくるわけですが、
昔から経営者や資産家くらいにしかかからなかった相続税ですが、
昨今は一般的な家庭であっても相続税がかかることが多くなってきました。


相続税は子どもなどの財産を受け取った人が支払う税金ですので、
親世代が何も対策をしないと困るのは次世代の子どもたちになります。
次世代を担う子どもたちに余計な負担をかけないように
準備・対策をしておくことは非常に大事だと考えます。


大きくは『相続対策』、税金面は『相続税対策』になりますが、
『相続税対策』も税制改正によって有効な対策が色々と変わってきています。

相続を間近に控えている方はもちろんのこと、
そうではないけど将来的にどうなるのか不安に感じている方はぜひ専門家へご相談ください。
いち早く相談して、現状を知る、そして対策を講じていくことが非常に大事です。


いかがでしたでしょうか?
2回に渡ってお送りしてきた令和6年度の税制改正大綱。
財務省の資料によると、今回の税制改正では2~3兆円ほどの税収減少が見込まれています(内国税のみ)。
これは経済成長による税収増が約3兆円あったことにより、その分を国民へ返すという「成長減税」になりますので、
その部分は評価できるものでしょう。
ただし、一方的な民間企業への業務の押し付けや満足とは言えない改正内容については
もっとしっかりと道を示してもらいたいと思っています。
それではまた。

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