Loading

【定額減税】の最新情報について解説いたします。給与所得者を中心に。

さて、いよいよ来月から『定額減税』が始まります。
会社の経理担当者や給与担当者、我々税理士や社労士は『定額減税』の準備に追われている真っ最中だと思います。
国税庁では『定額減税特設サイト』を設けて、パンフレットやQAを公開したり説明会を開いたりしているようですが、
手続きが複雑すぎて実務が追いつけるのかとても不安ですね。。

以前、税制改正のブログで簡単にご紹介しましたが、今回は最新情報も交えてより詳しく解説していきたいと思います。

  • 定額減税がなぜできたのか
  • 定額減税と給付【6つに分類】
  • 定額減税の実施方法【給与所得者】
  • 定額減税の留意点【給与所得者】
  • 給付について

定額減税がなぜできたのか

まず、なぜ定額減税ができたのかについて、
内閣官房のホームページに「施策の全体像・目的」というものが紹介されています。
そちらから抜粋しますと、
「我が国経済については、30年振りの高水準の賃上げなどの前向きな動きが見られておりますが、
現時点では、賃金の上昇が物価の上昇に追い付いていません。
こうした中で、政府では、2023年に策定された経済対策に基づき、以下のような考え方で、
定額減税や各種給付金をお届けすることとしています。
と記載されています。

「30年振りの高水準の賃上げ」については疑問符がつきますが、
要するに『物価が上昇しすぎて国民の生活が苦しくなっているので減税しよう!』
ということですね。
実際には『減税』という名を借りた『給付』の意味合いが強いです。
なぜならたくさん納税しているはずの高所得者は減税対象外で、反対に非課税世帯などには手厚い給付がされるからです。
高所得者は生活困ってないでしょ?
という理屈だと思いますが、それなら『減税』とは言わないでほしいですね。。

定額減税と給付【6つに分類】

ではその『減税』と『給付』について解説いたします。
『減税』と『給付』は下記の6つに分類されます。いずれかに該当するかによって、減税・給付の方法が異なります。

①定額減税
②住民税非課税世帯への給付
③住民税均等割のみ課税世帯への給付
④低所得者の子育て世帯へのこども加算
⑤新たに非課税等となる世帯への給付
⑥定額減税しきれないと見込まれる方(調整給付)

それでは一つずつ見ていきましょう。

①定額減税
【減税額】
所得税:本人3万円、同一生計配偶者及び扶養親族1人当たり3万円
住民税:本人1万円、控除対象配偶者及び扶養親族1人当たり1万円

※本人及び同一生計配偶者等については『居住者』に限ります。

【対象者】
所得税:令和6年分の合計所得金額が1,805万円以下の方
住民税:令和5年分の合計所得金額が1,805万円以下の方

※扶養控除等申告書を提出している方のみ
※合計所得金額とは、簡単に言うと各種所得金額の合計額です。
給与所得、事業所得、雑所得、不動産所得、譲渡所得などの合計額で、
特例を用いた特別控除や繰越控除の適用前の金額になります。
例えば、給与収入だけの方は、給与収入で2,000万円以下です(所得金額調整控除がある方は、2,015万円以下)

【減税手法】
・給与所得者
 所得税:令和6年6月以後最初に支払われる給与等の源泉徴収税額から控除【月次減税】
  ※最終的には年末調整において精算計算【年調減税】
 住民税:令和6年7月から令和7年5月までの11ヶ月にわたり徴収される住民税額から控除


・事業所得者
 所得税:令和6年の第1期予定納税額から控除
 住民税:令和6年の第1期納税額から控除

・公的年金受給者
 所得税:令和6年6月以後最初に支払われる年金の源泉徴収税額から控除
 住民税:令和6年10月以後最初に支払われる年金から徴収される住民税額から控除


②住民税非課税世帯への給付
令和4年分の個人住民税均等割が課されていない方のみで構成される世帯の世帯主に、1世帯当たり7万円が給付されます。
(令和5年夏以降に給付された3万円と合わせると、1世帯当たり計10万円の給付となります。)
ただし、世帯全員が、個人住民税が課税されている他の親族等の扶養を受けている場合は対象外です。

なお、この②と次の③、④については『令和4年分』の所得で判定されることです。ご注意ください。


③住民税均等割のみ課税世帯への給付
令和4年分の個人住民税非課税世帯(個人住民税均等割非課税世帯)以外の世帯であって、
個人住民税所得割が課されていない方のみで構成される世帯に対し、1世帯当たり10万円が給付されます。
ただし、世帯全員が、個人住民税が課税されている他の親族等の扶養を受けている場合は対象外です。


④低所得者の子育て世帯へのこども加算
令和4年分の個人住民税非課税世帯(②)及び均等割のみ課税世帯への給付(③)への加算として、
当該世帯の18歳以下の児童1人当たりにつき5万円が給付されます。


⑤新たに非課税等となる世帯への給付
令和5年分の個人住民税において、新たに個人住民税均等割が非課税となった方のみで構成されることとなった世帯に対し、
1世帯当たり10万円が給付されます。
令和5年分の個人住民税において、新たに個人住民税所得割が課されていない方のみで構成されることとなった世帯に対し、
1世帯当たり10万円が給付されます。

上記のいずれも、当該世帯において18歳以下の児童がいる場合は、④のとおり児童1人当たり5万円が給付されます。

ただし、世帯の全員が、個人住民税が課税されている他の親族等の扶養を受けている場合は、対象となりません。


⑥定額減税しきれないと見込まれる方(調整給付)
定額減税(①)において、定額減税額が、定額減税を行う前の所得税額・個人住民税所得割額を上回っており、
定額減税しきれないと見込まれる場合は、個人住民税を課税する市区町村が定額減税しきれない差額を給付します。

なお、早期に給付を実現する観点から、令和5年の課税状況に基づき、給付額が算定されます(当初給付)。
又、令和6年分の所得税額が確定した後、令和5年と比較して当初の給付額に不足があることが判明した場合は、
追加で給付がされます(不足額給付)。

定額減税の実施方法【給与所得者】

さて、それでは給与所得者の『定額減税』の実施方法について解説いたします。
実施方法の流れは下記の通りです。
①6月1日時点の従業員ごとに対象者を把握する
②月次減税の実施
③12月31日時点の従業員ごとに対象者を把握する
④年調減税の実施


①従業員ごとに対象者を把握する
まずは『従業員ごとに対象者を把握』いたします。
把握の仕方は、基本的には『令和6年分の扶養控除等申告書』を基に行いますが、
扶養控除等申告書では対象者が正確に把握できないケースがあります。
そのような従業員は別途、扶養親族等の状況を会社に知らせる必要があります。

その方法としては、会社が独自の様式を用意していることもありますが、
国税庁では『令和6年分 源泉徴収に係る定額減税のための申告書兼年末調整にかかる定額減税のための申告書』を
公開していますので、その様式を記載して提出すると良いと思います。

②月次減税の実施
対象者を把握したら、令和6年6月以後最初に支払われる給与等の源泉徴収税額から控除する形で定額減税を行います。
これを【月次減税】といいます。

これを定額減税額を控除するまで、年末まで行っていきます。

③12月31日時点の従業員ごとに対象者を把握する
定額減税については、最終的には年末時点での状況に応じて計算が行われます。
そのため、改めて年末時点の従業員ごとの対象者を把握する必要があります。①と同じ方法で行うのがよいでしょう。

④年調減税の実施
年末時点の対象者を把握したら、年末調整の計算と一緒に最終的な減税の精算を行います。これを【年調減税】といいます。
例えば、6月以降に扶養家族が増えた場合などは、年調減税においてさらに1人分減税します。

以上が大まかな流れです。文章で書くと簡単そうですが、結構大変です。。

定額減税の留意点【給与所得者】

それでは定額減税を実施する上での留意点をいくつか記載いたします。

・月次減税の対象者は、令和6年6月1日時点に在籍している方になります。
6月2日以降に入社した方は月次減税の対象にはなりません。(年調減税の対象者にはなります。)

・同一生計配偶者は、納税者と生計を一にする配偶者(専従者除く)で、合計所得金額48万円以下の人ですが、
本人の所得が900万円を超える場合の源泉控除対象配偶者以外の配偶者は定額減税の対象者となります。

・扶養親族は、納税者と生計を一にする親族(専従者除く)で、合計所得金額48万円以下の人ですが、
扶養控除の対象外となる16歳未満であっても、定額減税の対象者となります。

・年の途中で死亡した扶養親族については、死亡日の現況で扶養親族であれば定額減税の対象者となります。

・扶養親族の人数が変わった場合でも月次減税額は変更せず、年調減税で反映させることになります。

・給与だけでなく賞与からも減税の計算をいたします。

・給与明細書等には、『定額減税額(所得税)×××円』などと記載いたします。

・源泉徴収票には、『源泉徴収時所得税減税控除済額×××円、控除外額×××円』などと記載いたします。
ただし、年末調整をしなかった方(退職者含む)の源泉徴収票には記載する必要はありません。

確定申告される方は、最終的には確定申告において定額減税を受けることになります。

●給付について

最後に給付金について、市区町村によって異なりますが、基本的には申請に基づいて給付が行われます。
市区町村から案内があるはずですので、必ず確認し、申請期限を守って申請するようにしてください。

さて、いかがでしたでしょうか?
今回の『定額減税』については、解説するとどうしても長くなってしまいますね。。反省です。
しかもこれは今年限りの制度と。。まぁこんなに複雑な制度を毎年やられても困りますが。
ただあまり長いと誰も読んでくれなさそうなので、今後はもうちょっと短くしようかなぁとも考えています。悩みます。
それではまた。

関連記事

  1. 【中小企業経営者向け】過度な節税はやめましょう。まずは利益を出す…
  2. 令和6年1月1日からの電子帳簿保存法についてまとめました
  3. 保存すべきインボイスについてまとめました【簡易課税、2割特例とあ…
  4. 令和6年度の税制改正大綱についての解説と所感【第1弾】
  5. 被災地への義援金の寄附先・寄附方法について調べました(1/4現在…
  6. 年末調整について抑えるべき点と、確定申告との関係について
  7. 令和6年5月より【納付書の事前送付が取りやめ】になります。だれが…
  8. 争わない相続なら、ふるさと納税を活用して『相続税』も節税できる
PAGE TOP