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保存すべきインボイスについてまとめました【簡易課税、2割特例とあわせて】

インボイス制度が施行されて早2ヶ月が経ちました。
いままでの常識が変わったことで企業は今まで以上に気を遣いながら繊細な業務を強いられています。
来年からは本格的に『電子帳簿保存法』が始まり、さらには『定額減税』実現のための事務負担を
民間企業へ押し付けるような税制改正大綱も公表されました。
どうにかならないものかと思ってしまいます。

とはいえ、まずはインボイス制度に対応すべく業務を整理することが当面の課題になってきます。
どのようにインボイスを保存すればよいのか、この場合はどうなのかなど一覧でまとめてみましたので、
ぜひご参考にしていただければ幸いです。

【目次】

  • 保存すべきインボイス一覧
  • 税込1万円未満のインボイスが不要となる『少額特例』
  • 税込1万円未満の返還インボイスは不要
  • 『簡易課税制度』を選択している場合は気にしなくてもOK
  • 『2割特例』を適用できる事業者も気にしなくてもOK

保存すべきインボイス一覧

ここでは各取引内容について
『保存すべきインボイス』と
『インボイスが不要となる特例を受ける場合の帳簿への記載例』について一覧化いたしました。

又、インボイス自体の記載事項については、過去に書いたこちらのブログをご覧ください。

インボイス(適格請求書)の交付を受けることができなかった場合に、何かできることは?
https://www.nta.go.jp/users/gensen/nencho/index.htm

取引内容保存すべきインボイス特例を受ける場合の帳簿への記載例
ATM・両替機手数料税込3万円未満の場合不要例:○○銀行××支店 ATM
(R6税制改正により住所等は不要になる見込み)
窓口手数料通常通り、インボイス必要
ネットバンクからの振込手数料通常通り、インボイス必要
金融機関ごとに対応は異なるが、web画面や郵送での取得が可能
ETC料金原則、ETC利用照会サービスよりダウンロードした利用証明書が必要。
例外的に、クレカ明細と高速道路会社等ごとに任意の一取引の利用証明書が必要。
自販機税込3万円未満の場合不要例:○○市 自販機
(R6税制改正により住所等は不要になる見込み)
従業員の通勤手当
※旅費規程の定めあり
通常必要と認められる部分は不要例:通勤手当
従業員の出張旅費等
※旅費規程の定めあり
通常必要と認められる部分は不要例:出張旅費
従業員の経費精算会社宛のインボイスが必要。従業員宛のインボイスの場合は立替金精算書を作成することが必要。
※税込3万円未満の公共交通機関などの場合はインボイス不要
取引先の立替経費精算
例:取引先(A社)
  支払先(B社)
A社からの立替金精算書と、A社が受け取ったB社からのインボイスの写しが必要。
公共交通機関税込3万円未満の場合不要
税込3万円以上の場合インボイス必要(ただし、乗車券が入場の際に回収される場合は不要)
例:3万円未満鉄道料金
例:JR東日本 入場券等
メルカリなどのネットショップ通常通り、インボイス必要
※メルカリはショップへ直接問い合わせることが必要
アマゾン、楽天など通常通り、インボイス必要
※アマゾンの場合、領収書ではなく支払明細書にインボイス番号が記載されているので注意
コインロッカー税込3万円未満の場合不要例:○○駅コインロッカー
(R6税制改正により住所等は不要になる見込み)
コインランドリー税込3万円未満の場合不要例:○○市コインランドリー
(R6税制改正により住所等は不要になる見込み)
コインパーキング通常通り、インボイス必要
自動券売機(例:ラーメン店や牛丼屋)通常通り、インボイス必要
口座振替、事務所・店舗家賃などインボイスが都度発行されない場合、契約書通帳、振込の場合は金融機関発行の振込金受取書が必要
短期前払費用前払費用にかかるインボイスが必要
所有権移転外リースリース資産の引き渡し時にリース取引全額に対するインボイスが必要
古物商、質屋、宅建業者などが登録事業者でない者から仕入れる場合特例によりインボイス不要例:発行事業者でない者からの建物(古物、質)の仕入

税込1万円未満のインボイスが不要となる『少額特例』

上記の一覧は原則的なものになりますが、
特例的に税込1万円未満のインボイスについては不要となる『少額特例』の制度があります。

要件は以下の通りです。
①令和5年10月1日~令和11年9月30日までの間の取引についてのみ
②基準期間における課税売上高が1億円以下、
もしくは特定期間(基本的に、前事業年度の前半6ヶ月間)における課税売上高が5千万円以下の事業者のみ


簡単に言うと、2年前の課税売上高が1億円以下の事業者であれば、1万円未満のインボイスは気にしなくてOKということですね。
ただし、最初の6年間だけなので、その後は原則通りインボイス保存が必要になります。

税込1万円未満の返還インボイスは不要。ただし税率に注意。

『返還インボイス』とは、売上値引や売上返品などが発生した場合に発行するインボイスになります。
この中には、振込手数料が差し引かれて振り込まれる場合も含まれます。
振込手数料が差し引かれることは実務上かなり多いため業務負担を考慮して、
税込1万円未満の場合は『返還インボイス』は不要にしよう、ということです。
こちらは恒久的な措置になります。

なお、この場合ご注意いただきたいのは税率です。
例えば、買手が銀行で振り込む際に440円かかるので、10,000円から440円を差し引いて9,560円を振り込んできます。
売手としては、10,000円の売掛金に対して9,560円しか入金されないので、440円を売上値引として処理することになります。
(場合によっては支払手数料)
このとき売上値引の税率は、その値引き対象の税率に従います。
そのため食材などの場合は8%となります。
振込手数料分の440円なので10%と思ってしまいがちですが、要注意です。

『簡易課税制度』を選択している場合は気にしなくてもOK

消費税の課税方式について、『簡易課税制度』を選択している場合は、インボイス保存は気にしなくてもOKです。
『簡易課税制度』は売上側の消費税を基に計算する制度のため、仕入側(自分が支払う側)の消費税は使用しないため、
インボイス保存も不要です。
ただし、法人税・所得税の所得計算においては、通常通り、請求書や領収書などは必要になりますので、
インボイスでなくても領収書などは必要になります。

なお、『簡易課税制度』を適用できる事業者は以下のとおりです。
①基準期間における課税売上高が5千万円以下の事業者のみ
②適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに『消費税簡易課税制度選択届出書』を提出すること

(開業等した課税期間はその課税期間の末日までに)
③免税事業者が令和5年10月1日~令和11年9月30日までの間にインボイス登録を受け、
その課税期間から簡易課税制度の適用を受けようとする場合は、
その課税期間の末日までに『消費税簡易課税制度選択届出書』を提出すること
④2割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間から簡易課税制度の適用を受けようとする場合は、
その翌課税期間の末日までに『消費税簡易課税制度選択届出書』を提出すること
⑤簡易課税制度は原則2年間は強制適用

『2割特例』を適用できる事業者も気にしなくてもOK

『簡易課税制度』と同様に、『2割特例』の適用を受ける場合も、インボイス保存は気にしなくてもOKです。
『2割特例』は売上側の消費税の2割を納めるという制度のため、簡易課税制度と同様です。
ただしこちらも、法人税・所得税の所得計算においては、通常通り、請求書や領収書などは必要になりますので、
インボイスでなくても領収書などは必要になります。

なお、『2割特例』を適用できるのは、
令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間において
免税事業者がインボイス登録事業者となる場合
です。

2年前の課税売上高が1千万円以下の事業者が取引の都合上、インボイス登録した場合には適用できるということですね。

いかがでしたでしょうか?
インボイスは消費税に関連する制度になります。
消費税はとても複雑な税制になってきており、細かなところまで配慮しないと抜け漏れが出る可能性が多々あります。
特例の選択も事前にしなければならないものも多いため、必ず税理士へ相談することをオススメいたします。
そもそも訳も変わらずインボイス登録をしたが、消費税の申告・納税をしなければならないことを知らなかった、という方もいらっしゃいます。。恐ろしいことです。
一般の方にとって消費税は身近なものだったはずが、とても理解しがたいものになってしまいました。
気付いたときには手遅れだった、なんてことのないようにしたいですね。
それではまた。

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