【旅費規程(日当制度)】の悪用に気を付けましょう

ここ最近「旅費規程を上手く活用して手取りを増やそう!」という広告がSNSを中心に蔓延っています。
私の周りでもこうした甘い誘いを受けている方の話をよく聞くようになりました。
つまりこういった甘い誘いをする業者が増えているのです。

今回は旅費規程のそもそもの制度のお話と
この制度を活用、いえ、悪用する業者の手法をご紹介いたします。

  • そもそも旅費規程とはなぜあるのか
  • 二重精算にご注意を
  • 悪質な税理士、業者はどんな提案をしてくるのか

そもそも旅費規程とはなぜあるのか

まず旅費規程の制度についてお話いたします。
旅費規程とは、会社の業務のため遠方へ出張する従業員に対して
出張で発生する交通費や宿泊費、食事代、諸経費の費用について精算するための社内規定です。

簡単にいうと、「通常勤務では発生し得ない費用を賄うための規定」となります。

例えば、大阪出張で下記の経費が発生したとします。
・新幹線代 14,720円×2回分(往復分)=29,440円
・タクシー代 3,500円×2回分=7,000円
・宿泊費 15,000円×1泊分=15,000円
・夕食代 2,200円×1食=2,200円
・携帯電話バッテリー代 1,500円×1個=1,500円
・ボールペン代 200円×1本=200円

これらの経費は業務上必要だったため従業員が負担したものとします。
そうしますとこれらの領収書を持ってきてもらえれば全て経費精算が可能です。
これだけであれば旅費規程はなくても特に問題ありません。

ただし、出張が多い会社の場合、いちいち全員分の領収書を精算するのは大変です。
そこで旅費規程の登場です。


旅費規程では、領収書がなくても出張でかかるであろう費用を見込んで一定額を支給できるようにしておくことができます。
例えば、大阪の出張の場合は、交通費40,000円、宿泊費20,000円、日当5,000円などと規定しておけば、
領収書がなくても従業員に対して規定した金額を支給することができます。
これは便利ですよね。業務の手間が省けるわけです。
上記の場合、実際の費用額よりも規定した金額のほうが多いわけですが、
それでも規定した金額を出張手当などとして経費計上することができます。
又、受け取った従業員側では課税はされません。

二重精算にご注意を

ここで注意点です。
旅費規程で支給額が定められているのに
領収書でも精算をしてしまうと二重に経費精算がされてしまうことになるので要注意です。


よくあるケースとして、旅費規程では「宿泊費と交通費は実費精算、日当は一定額を定める」とされていることがあります。
この場合、宿泊費と交通費以外の領収書は不要です。
こちらも精算してしまうと二重精算となってしまうのでご注意ください。

悪質な税理士、業者はどんな提案をしてくるのか

さて、旅費規程について分かったところで、これを悪用する業者についてです。
何となくお分かりかと思いますが
「旅費規程を定めれば領収書は不要」という穴を付いてくるわけです。

第1の矢:高額な日当を設定する(特に役員)

まず、旅費規程の「日当」というのは
出張に伴って発生する費用を補填するためのものとして規定されることになりますが、
この「日当」を高額にすることが悪質なスキームの入り口です。

日当額は一般常識から逸脱しない金額に設定しなければ税務署から指摘を受けることになります。
しかしながらこの日当額が「高額かどうか」を立証するのは指摘する税務署側になります。
この立証は容易ではなく税務署側もしっかりと調査をした上で証明する必要があるため、
税務調査の現場では見逃されていることも間々あるようで、悪質な業者はこの穴を付いています。
というより、指摘されるかどうかは運任せ、調査官任せ、指摘されたときのリスクは顧問先に丸投げといった感じのスタンスです。
個人的にはとても悪質だと思いますし、やり方が嫌いです。

第2の矢:出張の定義の拡大解釈

第二の矢は、出張の定義です。
通常、出張というと「遠方への移動を伴う業務」をイメージしますが、
悪質な業者は「家を一歩でも外に出たら出張」という定義をします。

会社へ出勤しても出張、家の目の前のカフェに行っても出張、つまり毎日出張扱いです。
皆さんどう思われますか?
一般常識から考えて果たしてそれは出張でしょうか?
そもそも会社へ出勤しただけで何か諸経費がかかるでしょうか?
会社には基本的に業務をしに行くもので出張ではないでしょう。
「出張の規定は法律には規定されていない!」と言われてもあまりにも拡大解釈が過ぎると思います。

第3の矢:役員報酬を極端に下げる

そして第三の矢は、先ほどの「高額な日当」と併せて
「役員報酬の代わりに日当でもらいましょう」ということで役員報酬を極端に下げて
毎日のように日当で支払うようにと提案してきます。

こうすることで所得税、住民税、さらには社会保険料までも抑えることができるのです。

これで役員報酬は年間100万円程度、日当は年間数百万円というおかしな状態の完成です。
日当は出張に伴う諸経費を賄うためのものなのに、もはや生活費に回っているのです。
おかしな話です。

第4の矢:旅費規程システムの導入

最後に第四の矢は、旅費規程システム導入です。
通常、旅費規程がしっかりとしていて、報告書などの資料を保管しておけば問題ありませんが、
悪質な業者は「出張の事実をしっかりと残して税務調査に備えましょう!そのためのシステムを開発したのでこれを使ってください!」
という名目でシステム利用料も毎月徴収してきます。

もう意味が分かりません。
どんなシステムなのかは具体的には分かりませんが、
正直なところ悪質な業者が自分たちの保身のために作ったシステムでしょう。
ちなみに上記の提案料として数十万円~数百万円請求してくる業者もいるようです。

最後に

以上が私が思う旅費規程を悪用した悪質な税理士、業者についてです。

旅費規程は会社が社会に合わせて柔軟に規定できるように法律で細かいところまでは定めていません。
一般常識から逸脱したやり方は合法的ではあっても限りなく黒に近いと思っています。
(ちなみに悪質な業者はよく「これは合法です。弁護士もついています。」と言います。
何も後ろめたいことがなければそんなことを言う必要がありません。
)

税務調査の現場で指摘される可能性が少ないからといって、そこに手を染める必要がありますか?
リスクをこちらに丸投げする税理士、業者に会社の大事なお金を取られてよいですか?

ここまで長々とお読みいただいた経営者の方々には、しっかりと胸を張れる経営判断ができることを祈っております。

最後に、私は旅費規程に否定的なわけではありません。
一般常識から明らかに逸脱したスキームを提案する税理士や業者は多くの不幸を生むと思っていますので、
これ以上広がらないようにしたいためこのブログを書きました。
旅費規程は適切に活用していきましょう。

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